知らない明日が来たとしても
2.
 小田原崇人(おだわらたかひと)と出会ったのは、地方支社で働き始めて二年目に入った頃だった。
 ココロ飲料が各地で展開していた地方創成プロジェクトに才佳も関わることになり、同じく参加していた広告代理店の崇人とやり取りをするようになった。
 歴史ある定番商品を、そのエリア独自のアピール方法でいかに新鮮に見せていくか。
 崇人は様々な切り口でアイディアを提案し、そのどれもが才佳には思いつかないものばかりだった。
 新商品の開発に携わりたいという夢を持つ才佳にとって、崇人の発想力を学べる企画会議の時間がいつも待ち遠しかった。
 彼のようになりたいという憧れが恋愛感情に変わったのはいつだっただろうか。
 企画したイベントが成功に終わった日の夜に、思い切って二人きりでの食事に誘った。
 崇人は二つ返事で了承し、その後何度かデートを繰り返した後、今度は彼から告白をしてくれた。
 一緒に出掛けることはあっても、十個上の彼にとっては子供の相手をしているくらいの感覚だろうと思っていた。
 実ることはない片思いだと諦めていたせいで、好きだと言われた瞬間にぼろぼろと涙がこぼれ、崇人を随分と困らせてしまった。
 
 いつも穏やかで優しく、思い切り甘えさせてくれる年上の恋人。
 こんなにも誰かを好きになったのは初めてだった。
 付き合い始めて間もなく本社に異動が決まり、遠距離恋愛にはなってしまったけれど、欠かさずに連絡を取り合い毎月必ず会うようにしていた。
 全てが順調で、これからもこの人と人生を歩んでいくのだと当たり前のように思っていた。
 ――なのに。
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