知らない明日が来たとしても
「そういえば、これ何? くれるの?」
「ああ、代理店との打ち合わせで余ったやつ。うちのコーヒーにどんなものが合うか食べ比べしたんだ」
デスク上には先ほど暁が置いたチョコレートがいくつも散らばっている。
デパートで売られている高級ブランドのものから、コンビニで手軽に手に入るようなものまであるが、どれもビターな味をあえて選んで置いてくれたようだった。
才佳が苦めのチョコレートが好きだということを、暁は覚えてくれているらしい。
お礼を言いながら、思わず口角が上がる。
暁とは新卒研修の時からの付き合いだ。
本配属後に疎遠になる同期も多い中、才佳は地方支社、暁は本社と勤務地が離れてからも二人の連絡は途絶えることがなかった。
メッセージアプリで悩みや愚痴を話したり、出張で近くに来た時は日付が変わるまで飲みに行くことも多かった。
暁はどちらかといえば口数が少なく、ぶっきらぼうなところもあるが、才佳の話をいつも真剣に聞いて静かに励ましてくれる。
縁もゆかりもない地方に住むことになった時。本社に異動になり、新たな環境で仕事を覚えなくてはならなくなった時。
不安になることは今までたくさんあったけれど、乗り越えられたのは暁のおかげだと思っている。
偶然にも同じタイミングでマーケティング部へ異動になった時は、心細い気持ちが吹き飛ぶくらい嬉しかった。
出会ってから何年経っても、距離が近くても遠くても関係性は変わらない。
才佳にとって暁はただの同期ではなく、誰よりも信頼出来る大事な存在だった。
もらったチョコレートを一つ頬張ってパソコンの電源を落とすと、才佳は反対側の座席の島にいる暁に声を掛ける。
「暁って今日直帰って言ってなかったっけ」
「そのつもりだったけど、忘れ物あったから取りに来た。ついでに誰かさんの残業チェックも出来てよかった」
「残業チェックって……」
「誰かが言わないと、お前すぐ無茶するだろ」
顔は見えないけれど、小さな溜息だけが聞こえる。
無茶をした結果、体調を崩して周りに迷惑を掛けてしまった過去を思い出し、何も言い返すことが出来ない。
あの時も暁は本気で心配してくれていた。
親のように世話になりっぱなしの自分に呆れてくる。
「……というか、ちょっと気になったんだけど」
自席で用事を済ませたらしい暁が才佳の隣に来た後、改まった様子で尋ねてくる。