シェアオフィスから、恋がはじまる〜冴えない私と馴染めない彼〜
「え……そうなんですか、理恵さん?」

 聞いてみるも、理恵さんは黙り込んでいる。きっと、図星を指されて言い返せないんだろう。
 恩人の理恵さんを信じていたから、私もショックで打ちのめされた気分だ。
 でも、斉木さんが力を貸してくれたのだから、私も勇気を出して、自分の意見を伝えなくちゃ。

「理恵さん。あなたは私にとって、尊敬する先輩でした。でも、今は違います。私はもうこれ以上、あなたの無茶を聞きたくない」

「何よ、失礼ね。そんなことを言ってると、あなたに仕事を発注するのをやめるわよ」

 いまだ強気の理恵さんに、私はハッキリと言った。

「構いません」

「え……」

 理恵さんが目を見開く。私は言葉を続けた。

「この案件は責任を持って、最後までやり遂げます。でも、作り直しはしません。明日の商談は私も同席して、クライアントにデザインの説明をさせてください。そこで不満があるようでしたら、大きな修正でも対応します」

 斉木さんも口を開いた。

「今回の作り直しの件は、完全にあなたの独断だ。本来なら、工藤さんが言うように、クライアントにデザインを見せて、意見を聞いてから行うべきだと思うが」
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