シェアオフィスから、恋がはじまる〜冴えない私と馴染めない彼〜
理恵さんは私の恩人だ。
前の職場の先輩で、私が退職する半年前に独立。「仕事が増えたから手伝って」と言われて、会社を辞めたかった私は二つ返事で頷いた。
現在、フリーランスとしての私の仕事は、ほとんど理恵さんから請け負っている。
彼女の要望はなるべく叶えたいけれど、この状況じゃさすがに無理だよね……。
バッグからスマホを取り出して、理恵さんに電話を掛ける。
『あ、咲希ちゃん?』
「すみません、理恵さん。今、打ち合わせブースが満席で、会議ができそうにないんです」
すると理恵さんは、露骨に不機嫌そうな声を出した。
『だから断るっていうの? そんな言い訳、ビジネスの世界じゃ通用しないんだからね』
「ごめんなさい」
『とにかく、すぐに会議の場所を確保して連絡ちょうだい。じゃあね』
プツリと電話が切れる。
「い、急がなきゃ。えっと、打ち合わせができそうな場所は……」
考えを巡らせていると、突然、近くのドアがガチャリと開いた。
「きゃっ!」
「?」
驚く私を、ドアから出てきた男性が怪訝そうに見下ろしている。
そこでようやく、自分が電話をしながらオフィスエリアまで歩いて来てしまったことに気付いた。
ここは法人のレンタルオフィスがあるエリアで、専用のカードキーを使って、各社が契約している個室に入れる。
「ご、ごめんなさい!」
私は勢いよく頭を下げた。今日の私は、何だか謝ってばかりだ。
前の職場の先輩で、私が退職する半年前に独立。「仕事が増えたから手伝って」と言われて、会社を辞めたかった私は二つ返事で頷いた。
現在、フリーランスとしての私の仕事は、ほとんど理恵さんから請け負っている。
彼女の要望はなるべく叶えたいけれど、この状況じゃさすがに無理だよね……。
バッグからスマホを取り出して、理恵さんに電話を掛ける。
『あ、咲希ちゃん?』
「すみません、理恵さん。今、打ち合わせブースが満席で、会議ができそうにないんです」
すると理恵さんは、露骨に不機嫌そうな声を出した。
『だから断るっていうの? そんな言い訳、ビジネスの世界じゃ通用しないんだからね』
「ごめんなさい」
『とにかく、すぐに会議の場所を確保して連絡ちょうだい。じゃあね』
プツリと電話が切れる。
「い、急がなきゃ。えっと、打ち合わせができそうな場所は……」
考えを巡らせていると、突然、近くのドアがガチャリと開いた。
「きゃっ!」
「?」
驚く私を、ドアから出てきた男性が怪訝そうに見下ろしている。
そこでようやく、自分が電話をしながらオフィスエリアまで歩いて来てしまったことに気付いた。
ここは法人のレンタルオフィスがあるエリアで、専用のカードキーを使って、各社が契約している個室に入れる。
「ご、ごめんなさい!」
私は勢いよく頭を下げた。今日の私は、何だか謝ってばかりだ。