シェアオフィスから、恋がはじまる〜冴えない私と馴染めない彼〜
 シェアオフィスはビジネス街にあるので、ランチ候補の飲食店はよりどりみどりだ。
 隣を歩く男性に問い掛ける。

「何か食べたい物はありますか?」

「いや、特に。俺は好き嫌いもこだわりもないから、君が行きたい店があれば、そこに決めていい」

「えっと、じゃあ、この前できたばかりのカフェに行ってみたいんですが」

「分かった。そこにしよう」

 男性は頷くと、黒のシンプルなリュックから名刺入れを取り出した。

「そういえば、名乗ってなかったな。俺は斉木(さいき)

 差し出された名刺を受け取る。
 斉木優馬(ゆうま)さん。IT企業のシステムエンジニアなのか。私の知らない世界だな。

「斉木さん、よろしくお願いします。私も名刺を……」

 私もバッグの中を探る。自分の名刺を差し出すと、斉木さんはしげしげと眺めた。

「工藤さん、この名刺も君がデザインしたのか?」

「あ、はい」

 自分の「咲希」という名前からイメージした、満開の桜をあしらったデザイン。フリーランスになりたての頃に作った物だ。

「そうか。普段はシンプルなデザインの名刺しか見ないから、新鮮だな」

 斉木さんは微笑んで、名刺をしまった。
 初対面の時はちょっと怖い印象だったけど、今はそうでもないな。
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