シェアオフィスから、恋がはじまる〜冴えない私と馴染めない彼〜
 お目当てのカフェはランチのピークを少し過ぎていたからか、待たずに入れた。

「わあ、お洒落なお店!」

 はしゃいで辺りをキョロキョロと見回す私。北欧インテリアでまとめられた、温かみのある店内だ。
 席に案内されるやいなや、斉木さんはパッとメニューを見て、

「俺はワンプレートランチ、ごはんとスープ大盛りで」

 すぐに注文したので、私は焦った。

「ま、待ってください。えっと、私もワンプレートランチのデザート付きで」

 店員が去った後、斉木さんが気まずそうに言った。

「すまない。俺は注文が早いんだ。もっとゆっくり決めたかったんじゃないのか?」

「いえいえ。私もワンプレートランチが一番美味しそうだって思ったので」

 どうやら、斉木さんはマイペースな性格みたい。でも、相手への優しさも持ち合わせているようだから、そんなに気にならないな。
 やがて運ばれてきたワンプレートランチは、十穀米と彩り豊かなおかずが綺麗に盛り付けられた、目にも美味しい一皿だった。

「綺麗! 自分じゃこんなに手間暇かけて作らないから、有り難いな〜」

 皿の配置をパパッと決めて、手早く写真を何枚か撮る。そんな私を見て、斉木さんが首を傾げた。

「工藤さんは、まるでこの料理が美術品にでも見えているようだな。俺にとっては、ただの食べ物だが」

「それはそうですが、こういう素敵なお店は、目でも楽しむんですよ。店内の雰囲気や、盛り付けまで見て味わってこその外食です!」

 熱弁した後、私はハッと気付いて頭を下げた。

「あっ、すみません。せっかくの料理が冷めちゃいますよね。食べましょうか」

 すると、斉木さんはクスクスと笑った。

「やはり、俺にはない感性だ。工藤さんといると面白いな」

 面白いって、褒め言葉の内に入るのかな?
 でも、斉木さんの表情から、彼が嫌な気持ちになってないのは分かる。
< 9 / 24 >

この作品をシェア

pagetop