未来へ繋ぐ、禁断のタイムスリップ

見知らぬ世界での目覚め


窓の外を吹き抜ける風が、制服のスカートをそっと揺らした。
莉緒は教室の隅で、小さくため息をつく。

「また……同じ毎日」

友達との会話、授業、部活――すべてが繰り返されるだけの平凡な日常。
どこか心がぽっかりと空いている気がして、莉緒は机に突っ伏した。

その時、教室の時計が異様な音を立てて鳴り響いた。
光が眩しく瞬き、周囲の景色が一瞬にして歪む。

「……え?」

まぶたを開けた瞬間、思わず声が漏れた。

そこは、さっきまでいた、学校の教室ではなかった
天井からは大きなシャンデリアが輝き、赤いベルベットのカーテンが風に揺れている。
重厚な家具に囲まれて、息を呑むほど豪華な洋館の一室。

「なんで……? ここ、どこ?」

教室でノートに向かっていたはずなのに、気づけば見知らぬ部屋で寝ていた。
机も椅子も、教科書もどこにもない!
遠くで聞こえる馬車の音――五感が現代とは違う世界を伝えてくる。

私の頭はパニック!
「……夢……じゃない……」
手のひらに触れる布団の感触、部屋の匂いも、すべてが確かにここにある。
夢ならすぐに消えるはずなのに、現実の重みが手足にずっしりと伝わる。
私は、授業中に、「過去の時代」へ迷い込んだ?
頭が混乱する…

「やっと目を覚ましたか」

低く冷たい声に、私はハッと振り返った。

そこに立っていたのは、一人の青年。
黒髪をきっちりと撫でつけ、仕立てのいいスーツに身を包んでいる。
長い脚、まっすぐな背筋、そして人を射抜くような瞳。
息が止まるくらい、完璧なイケメンだった。

「……だ、誰?」

戸惑う私を見下ろし、彼は薄く笑う。

「俺の屋敷に忍び込むとは、大した女だな」

「えっ!? ち、違います! 私、気がついたらここにいて……!」

必死に否定するけど、彼は聞く耳を持たない。

「言い訳はいい。俺の許可なくここに入れる人間はいない。
つまり、お前は俺に運ばれてきたんだ!
玄関に倒れていた。だからここに運んできた」

運ばれた? どういう意味? 玄関に倒れてた?
混乱する私の腕を、彼は強引に掴んだ。
熱い掌の感触に、心臓が跳ねる。

「……放して!」

抵抗しても、彼の力は強い。

「俺は、この国の未来を背負う財閥の御曹司だ。
名前は――九条 麗」

その名を口にした瞬間、私の頭に浮かんだのは、
教科書の中で見た“100年前の実業家”の名前だった。

まさか、そんな……。
胸の奥がざわめき、体が小刻みに震える。
これは夢ではない――
目の前の青年も、ここも、すべて現実なのだ。

「お前のような女、見たことがない。面白い……」
彼は少し間を置き、鋭い瞳で私を見つめた。
「……俺の退屈を、少しは紛らわせてくれるだろう。いや、正確には――前から、こういう子が来るのを、どこかで待っていたのかもしれない」

傲慢で、冷酷で――でも、その奥にある何かに、私は自然と惹かれてしまった。

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