未来へ繋ぐ、禁断のタイムスリップ

麗との不器用な距離

理解しようとするけど、やっぱり無理…

「な、なんで私がここに……！」

必死に抵抗しても、九条麗の手は強く、逃げることはできなかった。

「大人しくしろ。無理に逃げようとしても意味がない」

彼の冷たい瞳に見下ろされると、言葉が詰まる。
でも、心の奥が熱くなるのは、なぜだろう。

「俺に敬意を払え、莉緒――これからは、麗様と呼べ！」

麗様…？何を言ってるのか意味わからない…どれだけ俺様なの。

そう思った瞬間、私は思わず息を止めた。
――名前を……知っている？
だって、まだ一言も自己紹介していないのに。

「え……？　な、なんで私の名前を……！？」
心臓が跳ね、頭の中が真っ白になる。
混乱と恐怖、そしてどこか胸の奥が熱くなる不思議な感覚が同時に押し寄せた。
しかし俺様ぶり全開の声に、思わず小さく舌打ちしてしまう。

――でも、目の奥に時折見せる優しさに、私は心を揺さぶられた。

「この屋敷で何をするつもりなの？」
問いかける私に、麗は少し微笑む。

「お前を放すつもりはない。まずは、この時代の生活に慣れてもらう」

慣れるって……私はこの時代に生きるって事？
スマホもないのに…私にどうしろっていうのよ！
帰りたい！でもどうやって帰るかもわからない…

突然麗が手渡したのは、清潔な服。
「着替えろ」とだけ言う。

私が戸惑っていると
「そんな服を着ていたら、この時代に合わない」
「え…？」
そうか！私制服着てたんだ！
素直に服を受け取る

麗は無言で立ち去り、私は一人、洋館の窓から外を見た

「不思議なことには慣れている――」
そう言い残した彼の言葉が、頭の片隅でずっと引っかかっている。

未来の私に繋がる、この不思議な世界。
そして麗――傲慢で、でも確かに優しい御曹司。
心は、知らず知らずに彼に引き寄せられていく――。