未来へ繋ぐ、禁断のタイムスリップ

真相

静まり返った部屋に、俊樹の低い声が響いた。

「――もう、隠し立ては致しません」

窓から差し込む月明かりに照らされ、俊樹の表情はいつになく険しかった。
莉緒は思わず麗の袖を握りしめる。

「黒幕は……誰なの?」

俊樹は一瞬、目を閉じ、重い口を開いた。

「影を操り、“リオ”という名を持つ者を時の渦へと誘ってきた張本人――それは、九条家そのものなのです」

「……九条家?どう言う事?」
莉緒の声が震える。

俊樹は頷いた。
「この家はただの財閥ではない。代々、“時を超える術”を秘匿してきた一族だ。だが、その力を求めた者たちは次第に狂い、古文書に記された“リオ”という名の存在を鍵にして、時を操ろうとした」

麗の眉がわずかに動く。
「……だから、何度も“リオ”が現れたのか」

「はい」
俊樹の声は冷たくも悲しげだった。
「歴代の九条家当主たちは、影を使い、異なる時代から“リオ”を呼び寄せてきた。しかしそのどれもが、本物ではなかった。……そして――」

俊樹は視線を逸らし、かすかに息を吐いた。
「私が仕えていた先代もまた、その一人でした」

麗が目を見開く。
「先代……?」

「ええ。かつて現れた“リオ”を、本物だと信じ、愛した。しかし……その女性は影に呑まれ、消えてしまった。先代は狂い、九条家は歪みを増したのです」

莉緒は息を詰め、麗の横顔を見つめた。

俊樹の声が震える。
「あなたが見たのは……操られた“偽のリオ”。
けれど今度こそ違う。莉緒様、あなたこそ古文書に記された“最後のリオ”。繰り返しを終わらせる本物なのです」

莉緒の胸に、鋭い痛みが走った。
「じゃあ……私は……」

俊樹は首を横に振る。
「しかし、本物が現れたことで、影はますます強大になった。あなたを取り込もうと、次々に罠を仕掛けている。……落とし穴も、すべては影の仕業」

「待て」
麗の声が鋭く響く。
「つまり……九条家は、俺たちの敵だと?」

俊樹は、沈黙したのち、深く頭を下げた。
「申し訳ありません。私は……九条家に仕える者として、この真実を隠し続けてきた。けれど、もう誤魔化せない。――敵は、すぐ傍にいます」

莉緒の背筋に冷たいものが走る。
「すぐ傍に……?」

俊樹はゆっくりと顔を上げ、その瞳に苦悩を浮かべながら告げた。

「……影を受け継いだのは、麗様の実の父――先代九条当主なのです」

「父上が……黒幕……?」

麗の声は震えていた。
だがその目は、今までにないほど鋭く光っていた。

莉緒は隣で言葉を失う。
「そんな……じゃあ、麗様の家族が……」

俊樹は、深くうなづく
「はい。影を受け継ぎ、操っているのは先代当主。麗様をも“駒”として利用するつもりだったのです」

麗は拳を握りしめた。
「……すべて繋がったな。繰り返される“リオ”も、失った大切な人も……」

言葉を飲み込み、彼は莉緒の方へ向き直る。
莉緒は怯えた瞳で、彼を見上げた。

「私……また奪われる? 本物の“リオ”だから……今度こそ、狙われるの?」

その声はかすかに震えていた。
麗は彼女の肩を強く抱き寄せる。

「いいや。今度こそ、絶対に奪わせない」

莉緒の目に涙が滲む。
「でも……相手は、麗様の……」

「父だろうが何だろうが関係ない!」
麗の声が鋭く響いた。
「俺はあの人に従うために生きてきたんじゃない。――
今は莉緒お前を守る為に生きてる!
大丈夫。必ず守る。」

麗は莉緒の手を取り、静かに指を絡める。


「莉緒、俺たちで芝居を打とう。父上の影を引きずり出す。そのときが決着だ」

莉緒は大きく目を見開いた。
「芝居……?」

「そうだ」
麗は力強くうなづく。
「父上はきっと動く。本物の“リオ”を奪おうと。俺たちが罠にかかるふりをして、引きずり出す。……それしかない」

莉緒の心臓が早鐘のように打ち始める。
恐怖はあった。けれど同時に、麗の決意に胸が熱くなる。

「麗様……私、信じていい?」

「信じろ。俺はもう、失わない。二度と」

その言葉と共に、麗は莉緒をそっと抱きしめた。
温かな鼓動が、莉緒の震えを少しずつ静めていく。






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