未来へ繋ぐ、禁断のタイムスリップ

屋敷の秘密と距離の縮まり

夕暮れ時、お屋敷の廊下に淡いオレンジ色の光が差し込む。
私は縁側で手を組み、応接間での出来事を思い返していた。

「莉緒、少し散歩するか？」
声に振り返ると、優しく微笑む麗がいた。
庭に出ると、猫たちが昨日よりも活発に走り回っている。

「……また、あの猫たちか」
思わず笑いそうになる。
でも、その直後、庭の茂みから小さな物音がした。

「ん？」
私が振り返ると、麗はすぐに手を伸ばして私を引き寄せる。

「危ない」

小さな影が茂みから飛び出し、猫の一匹が私たちの前に転がるように出てきたのだ。
「びっくりした……！」
思わず小さく声をあげ、麗の手をぎゅっと握った。

とっさに手を握った事に焦り、パッと手を離した
「ごめんなさい…」とうつむいた。顔が熱い。逃げたい！

麗は冷静に猫を抱き上げ、優しく撫でている。
「……こういうところ、慣れていないな」
俺様な口調に私は俯いた。

顔を上げると、庭の奥に古い扉が見えた。
もう恥ずかしいので、話題を変えた。
「あそこ入っていいの？」
私が尋ねると、麗は少しだけためらっていたが、

「入っていい……だが、全部を知るには早すぎる」

私たちは、扉の前にやってきた。

扉を開けると、中には古びた書類や家具が整然と並ぶ部屋だった。
棚には古い写真や文書があり、九条家の歴史や秘密を匂わせる雰囲気。

「……麗様、これは……？」
私は思わず声をひそめる。

「九条家には、外には言えない秘密がある。お前には少しずつ、教えてやる」
彼の低い声に、胸が高鳴る。
――傲慢で俺様な彼の中に、深い孤独と優しさが同時にあることを、私は少しずつ理解し始めていた。

猫が部屋の隅でくるくると回る。
私は思わず笑い、麗も微かに笑った。
その瞬間、自然に手が重なり、距離が縮まる。

「……俺が守る」
麗の囁きが、夕暮れの屋敷に柔らかく響く。

「守る？」どういう事？

まだ触れられない距離も、秘密の謎もある。
でも、確かに私たちは少しずつ近づいている――。