街の優しい弁護士の偽装恋人……のはずが、本命彼女になりました!
「覚えてなさいよ」
 捨て台詞を吐いて、女は身をひるがえす。カツカツとヒールの音を立てて雑踏に消えると、ようやくほっと息を吐けた。
「夫がいるのに男性に迫るとか、ありえない!」
 思わずつぶやく遼子に、昂大は苦笑する。

「意外にいますよ」
 彼の言葉に、遼子は彼の仕事を思い出す。弁護士事務所なら不倫の処理の相談も多いのだろう。それと同時に、やってしまった、という気持ちがわいてくる。

「すみません、弁護士なら嘘は駄目ですよね。つい、つきあってるなんて言っちゃいましたけど……」
「嘘じゃないならいいのでは?」
 言われた言葉を理解するのに、遼子は数瞬を要した。

「え、それってつまり……」
「私とおつきあいしてみませんか?」
 遼子は驚いて彼を見つめる。
 彼の顔は真剣で、とても嘘をついているようには見えなかった。
 劇的な展開になったらどうしよう。
 そう思いはしたものの、いざそういう展開になったらどう答えたらいいのかわからない。

 遼子の胸の中では緊急会議が行われた。
『こんなイケメン、逃す手はない!』
『っていうか超絶好みじゃん!』
『絶対に付き合うべきだって!』
 遼子A,遼子B、遼子Cの緊急会議は、全会一致で採決がなされた。

「よ、よろしくお願いします」
 一礼して顔を上げると、昂大の笑みが遼子を迎える。
「よろしく」
 そう言って頭を撫でられ、遼子の顔はかーっと赤くなる。

 秋なのに真夏のように体温が上がり、遼子はただ彼を見つめる。
 まぶしいのは太陽のせいだけじゃない、という確信だけが胸にあふれていた。








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