街の優しい弁護士の偽装恋人……のはずが、本命彼女になりました!
「紙森さん、行ってください」
 昂大に言われ、改札に行こうとしたときだった。
 素早く回り込んだ女に、遼子は立ちすくむ。

「私よりこんな女がいいの!?」
「徳田さん、落ち着いてください」
 昂大は遼子との間に割って入り、冷静に声をかける。が、女は興奮していて聞きそうにない。

「私のほうが絶対にいい女よ! ふるなんてありえないわ!」
「そもそもあなたは人妻ですよ」
 遼子は唖然とした。人妻であるにも関わらず男性に迫る人が目の前に現れるなんて思いもしなかった。

「だーかーら! あなたがつきあってくれるなら旦那とは別れるって言ってるじゃない!」
「私は付き合う気はありません」
 遼子ははっとする。もしかして、自分がつきあっていると言えば彼女は諦めるのでは?

「あ、あの、彼はもう私とつきあってるので!」
 昂大は目を見開いて彼女を見た。
 遼子が頷くと、昂大は瞬間、迷いを見せたものの、すぐに頷く。
 彼は遼子の肩をぐっと抱き寄せ、女を見た。

「そういうことですので」
「誰ともつきあってないって言ってたじゃないの!」
「あのあとに付き合ったんです。覚えてないでしょうけど、私は水をかけられたときにあの場にいたんです」
 遼子が言うと、女はぎりぎりとにらみつけてきた。ひるんだ遼子を後ろに下がらせ、昂大が言う。

「あなたが入る隙はありません。お引き取りを」
 毅然と断る彼に、女は憎悪の目を向けた。
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