甘やかな契約婚 〜大富豪の旦那様はみりん屋の娘を溺愛する〜


「もう一つは……お前だからだ」


唐突に放たれた言葉に、心臓が大きく跳ねた。


「わ、私……?」
「ああ」


彼の真っ直ぐな眼差しに射すくめられ、喉が渇く。胸の奥で何かがざわめき、熱くなるような、冷たくなるような、複雑な感情が渦巻いた。どうして、この人の口からそんな言葉が出てくるのか。

私はただの味醂屋の娘だ。特別な才能も、華やかな経歴も、目を見張る美貌もない。借金を抱えた小さな老舗を必死に守ろうとしている、ただの女だ。
 なのに、なぜ?


「お前にとっても、悪い話じゃないはずだ」


周寧の声は、どこか挑戦するような響きを帯びていた。まるで、私の心を試すように。

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