甘やかな契約婚 〜大富豪の旦那様はみりん屋の娘を溺愛する〜
「……でも……」
頭の中で、必死に反論を探そうとする。
結婚は、そんな簡単に決めていいものじゃない。お金のために結婚するなんて、きっと不幸になる。
お祖母様の教えが脳裏をよぎる。
『心から愛する人と、魂を込めた味醂を作るのよ』と、笑顔で語っていた祖母の声。
でも、現実はあまりにも厳しい。
銀行からの冷たい通告。
赤字続きの帳簿。
疲れ果て、病に伏す父の顔。
そして、守りたい【みやび】と、そこで働く従業員たちの笑顔。
現実が、私を追い詰める。
この提案を受ければ、すべてが救われるかもしれない。借金がなくなり、蔵が守られ、従業員が安心して働ける。
祖母の遺した味醂を、未来に繋げることができる。
でも、その代償として、私は何を失うのだろう?