甘やかな契約婚 〜大富豪の旦那様はみりん屋の娘を溺愛する〜
「……私が、勝手に期待しすぎたんだ」
ある夜、リビングのソファに一人で座り、夜景をぼんやりと眺めながら呟いた。
あの夜の温もりを、つい思い出してしまう。【みやび】の味醂を手に、真剣な眼差しで料理をする彼の姿。冷たい仮面の下に隠された、ほんの少しの優しさ。
それが、私に希望を抱かせてしまったのだけど。
彼が【みやび】を救ってくれたのは事実だ。借金を肩代わりしてくれて、従業員たちの生活を守ってくれた。辞めてしまった職人さんも戻って来てくれて……みんな嬉しそうだった。
だから、蔵も、祖母が愛した味醂も、未来に繋げることができた。
でも、それは私が愛する妻のためだからじゃない。
彼がただただ【みやび】の味醂をすきだったから、きっとそうしただけだ。
──彼にとって私は、都合の良い駒でしかない。