甘やかな契約婚 〜大富豪の旦那様はみりん屋の娘を溺愛する〜



 若くして財界を牛耳る、大財閥の御曹司。名前だけなら、ニュースや経済誌で何度も耳にしたことがある。
 なぜ、こんな人がこんな時間に、こんな場所に? 私の頭は混乱し、言葉が出てこなかった。

 彼は一瞬、蔵の中を見回し、まるでこの空間のすべてを一瞬で把握するような鋭い視線を投げた。そして、私に真っ直ぐな瞳を向けて、静かに、しかし力強い声で言った。


 「……借金の件、俺が肩代わりしてやろう。その代わり──俺の妻になれ」


 低い声が、心臓を撃ち抜いた。
 信じられない言葉に、私は息を呑むしかなかった。頭が真っ白になり、時間が止まったかのように感じられた。彼の瞳は、まるで私の心の奥底まで見透かすように、揺らぐことなく私を捉えていた。 





 
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