甘やかな契約婚 〜大富豪の旦那様はみりん屋の娘を溺愛する〜
「絶対に……守るんだから」
自分に言い聞かせるように呟いた。でも、声はかすれて震えていた。どれだけ強い言葉を口にしても、心の奥底では不安が渦巻いている。
この蔵も、味醂も、祖母の想いも、すべて失ってしまうのではないか──その恐怖が、私を締めつけて離さない。
その夜。
帳場で電気を落とし、片付けをしていた私の前に、突然、ひとりの男が現れた。
黒いコートに身を包み、静かに歩を進める姿は、どこか冷ややかな気配をまとっている。まるで夜の闇そのものが形を成したかのような、鋭い存在感。
蔵の薄暗い明かりに照らされたその顔は、驚くほど整っていて、しかしどこか近寄りがたい雰囲気を漂わせていた。
たしか、──嘉山周寧さん。