長すぎた春に、別れを告げたら
治久とは二十歳のときに大学のキャンパスで知り合い、彼から告白されて交際が始まった。

そして就職活動中に、社会人になって二年くらいしたら結婚しようとプロポーズを受けた私は、最初に内定をもらったA:ROOMに就職した。治久は私が専業主婦になるのを望んだから、たとえなりたかった職業に就けても二年で辞めるなら意味はないと考えたのだ。

今どき結婚イコール安泰なんていう昭和の価値観は持っていないつもりだったけれど、私は夢を見ていたのかもしれない。

結局治久は、社会人になって二年が経っても結婚してくれず、交際期間だけが延々と伸びた。

「あれから一週間、よく考えたんだ。やっぱりもう一度チャンスがほしい」

「チャンス?」

「萌歌とやり直したい」

まさか復縁を迫られるとは思ってもみなかった。

「……無理だよ」

「どうしてだ? たしかに俺は最近、おまえを雑に扱っていたかもしれない。でもそれはおまえに心を許してる証拠だろ」

治久は言い訳を並べた。

わざわざ会社の近くまでやって来て、自分の気持ちを押しつけてくる姿に、ますます心が冷えていく。

たぶん治久は、長年付き合った彼女に振られたという状況が嫌なだけなのだろう。
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