長すぎた春に、別れを告げたら
「……かわいいな」
画面を確認して柔らかく微笑んだ彼に、思わず釘付けになる。
彼がこんな表情をするのは初めてだ。
しかも『かわいいな』というのは、誰に向けての言葉なのだろう。
「そろそろ出ましょうか」
「あ、すみません」
彼に促されて、私は慌ててグラスの飲み物を飲み干した。いつの間にか一時間が経っている。
相良さんが先に店を出て、治久がいないか確認してくれた。
「大丈夫そうです。さすがに帰ったみたいですね」
「本当にありがとうございます」
乗りかかった船だからと彼に言われて、メッセージアプリのIDを交換した。
「もしなにかあればいつでも連絡してください」
「はい」
返事をして、最寄り駅で相良さんと別れる。なんだかいろいろと思いがけない一日だった。
電車に揺られていると、先刻の相良さんの柔らかい微笑みが頭をよぎった。
あれはきっと、愛しい人に向けた表情だ。
彼が誰にも落ちないというのは、すでに彼女がいたからなのだろう。
彼ほどもてる人がフリーなはずがない。私なんかとIDを交換してよかったのだろうか。私を女性として意識していないからこその行動だったのだろうけれど。
彼は会計顧問の先生で、私は顧問先の一社員。
私たちが連絡を取り合うことはきっとない。
画面を確認して柔らかく微笑んだ彼に、思わず釘付けになる。
彼がこんな表情をするのは初めてだ。
しかも『かわいいな』というのは、誰に向けての言葉なのだろう。
「そろそろ出ましょうか」
「あ、すみません」
彼に促されて、私は慌ててグラスの飲み物を飲み干した。いつの間にか一時間が経っている。
相良さんが先に店を出て、治久がいないか確認してくれた。
「大丈夫そうです。さすがに帰ったみたいですね」
「本当にありがとうございます」
乗りかかった船だからと彼に言われて、メッセージアプリのIDを交換した。
「もしなにかあればいつでも連絡してください」
「はい」
返事をして、最寄り駅で相良さんと別れる。なんだかいろいろと思いがけない一日だった。
電車に揺られていると、先刻の相良さんの柔らかい微笑みが頭をよぎった。
あれはきっと、愛しい人に向けた表情だ。
彼が誰にも落ちないというのは、すでに彼女がいたからなのだろう。
彼ほどもてる人がフリーなはずがない。私なんかとIDを交換してよかったのだろうか。私を女性として意識していないからこその行動だったのだろうけれど。
彼は会計顧問の先生で、私は顧問先の一社員。
私たちが連絡を取り合うことはきっとない。