長すぎた春に、別れを告げたら
「あ、別に私がやりがいを感じていないというわけじゃなくて……」

「公認会計士は若くても第一線で活躍できるし、やりがいはありますよ」

相良さんが答えた。

「そういえば相良さんは大学在学中に資格を取得したんですよね。職場の人に聞きました」

「はい。頼りにされるのが好きなので、いろんな会社を会計面でサポートできるのはうれしいですね」

『誰にも落ちない相良先生』は、仕事に関しては熱い人のようだ。

「私は子どもの頃から本を読むのが好きなんです。今の仕事は事務だし、なんの接点もないですけど」

「ああ、二宮金次郎……」

「あっ、その呼び名はやめてください」

慌てて遮る。

本当は、本の編集や校正に携わる仕事に就きたいと思っていた。

その夢はあきらめたけれど、今も読書が一番の趣味だ。

「俺の友人に、大手の出版社で編集長をしているやつがいますよ」

「そうなんですか」

相良さんの友人が担当した作品を聞いたら、読んだことがあるものばかりだった。かなり敏腕編集者のようだ。

興味深い話題に耳を傾けていたとき、テーブルの上に置いていた相良さんのスマートフォンが光った。
< 19 / 54 >

この作品をシェア

pagetop