長すぎた春に、別れを告げたら
ネットでも本を買うけれど、実際にどんな本が売れているのか、どんな新刊が出ているのかを把握するために、実店舗にも定期的に足を運んでいる。

「お客さんが立ち止まってる場所や人が多いコーナーもチェックします」

「市場調査じゃないですか。浜名さん、出版関係者みたいですね」

苦笑いされた。たしかに普通の人はお客さんの動向を見ないだろう。

私も相良さんも数冊ずつ小説を買って書店を出た。

彼のマンションまでは歩いて帰ることにしたので、本を一冊だけ手に取り、残りはリュックに入れる。

楽しみにしていた新刊だったので、道すがらパラパラと開いたら、隣から強い視線を感じた。

「今日も二宮金次郎」

相良さんが笑いをこらえている。

「あっ……!」

「歩きながら本を読むのは危ないって言ったでしょう?」

やんわりと押し止められて、いたたまれなくなりながら本をリュックにしまった。

とはいえ手が空いていると、なんだかそわそわして落ち着かない。

「手持ち無沙汰なら、俺と手をつなぐ?」

相良さんは私の顔を覗き込み、ぎゅっと手を握った。

大きくて温かな感触に、一気に耳の先まで熱くなる。

「えっ? あ、あの」
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