長すぎた春に、別れを告げたら
翌日、ちょうど仕事が終わったタイミングで、相良さんからメッセージが届いた。

近くにいるので外食して帰りましょうというお誘いだった。

お世話になっているお礼をできていなかったし、絶好のチャンスだ。ぜひごちそうさせてください、と返信する。この一週間、食費や光熱費を受け取ってくれなかったので、どうしたものかとずっと悩んでいたのだ。

「相良さん、なにが食べたいですか? 遠慮なく言ってくださいね」

最寄り駅で待ち合わせ、張り切る私を見た彼は困ったような顔になる。

「女性にごちそうしてもらうのは気が引けます」

一回の飲食代くらいでは返せないほど恩があるのに、彼はためらってお店を決めてくれない。

仕方がないので、ちょっと強引に高そうなレストランに入った。

料理とワインを楽しんでもらい、ようやく支払いができた私は、少し気分がすっきりする。

食事のあとは、私がお気に入りの書店に付き添ってもらった。

「ここ、本の品揃えがいいんですよ」

「へえ」

相良さんは初めて来たみたいだ。

店内は広くないけれど陳列にこだわっていて、店員さんの熱意が伝わってくる。

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