長すぎた春に、別れを告げたら
「……さとみさん、大丈夫でしたか?」

「さとみは実家に連れて帰って母親に預けてきました」 

相良さんは彼女を実家へ送っていったようだ。

「……ご家族公認の仲なんですね」

「え?」

「なんでもないです。それじゃあ私はここで……」

未練がましくふたりの仲を探ろうとする自分が嫌で、勢いよく彼に背中を向けた。

「浜名さん?」

呼びかけられても振り返らずにマンションを出る。

荷物が重かったのに、全速力で走った。


自分のマンションの最寄り駅で電車を降りた。

そこからはとぼとぼと歩いては立ち止まる。

終わるときって本当に呆気ない。

相良さんとビルのエントランスで初めて顔を合わせてから、短い間だったけれど楽しかった。

いつも私を気にかけ、治久とのことを相談に乗ってくれてうれしかった。治久の浮気を許さなくていいと言ってもらったときは救われた思いがした。ただの顧問先の社員の私に、あんなにも親切にしてくれたのだ。

彼が優しい人だという事実は変わらない。ただ私が勝手に好きになって、勝手にショックを受けているだけだ。

これからは、私ひとりで治久に立ち向かわなければ。
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