皆に優しい幸崎さんは、今日も「じゃない方」の私に優しい
「え?」
「それはね、佐倉さんに先に告白させてしまったこと。だから、仕切り直しをさせて欲しいんだ」

 彼は背すじをしゃんと伸ばすと、こちらに向き直った。

「佐倉美和さん。好きです。俺と、付き合ってくれませんか?」

 改めて聞く告白の言葉は、なんて甘く耳に響くのだろう。足元がおぼつかない、ふわふわと浮き立つような感覚の中で、私は何度も頷くことしかできなかった。

「はい……!はい、お願いします……!」

 私の返事に、幸崎さんも嬉しそうに微笑んだ。カフェのBGMもざわつく店内の喧騒も、何もかもが遠くに聞こえる。二人だけにも思えるこの空間で、私の心臓は今までにないくらいに高鳴っていた。

「あ、でも……橘さんとは、その……」

 せっかくの幸せな空気に水をさしてしまうのはわかっていた。けれど私は彼女が発したあの言葉が、どうしても気になって仕方なかった。

「何か変な噂が流れてるみたいだけど、彼女とは何もないよ?」

 幸崎さんは、私の言葉を遮るようにきっぱりと答えた。

「広報誌のインタビューを頼まれて、断りきれなくてこの間取材は受けたけど、それきりだから。他は一切、何もないよ」

 彼の真っ直ぐに煌めく瞳は、不安になっていた私の心を明るく照らしていく。

「心配させてごめんね。でもこれからはもう、そんな噂が出ないようにする。だって俺には、佐倉さんしか見えてないから」

 その陽だまりの様な言葉の響きは、私の胸の氷塊をあっという間に溶かしていく。
 
 やっぱりこの人が大好きだ。

 私は改めてそう思うのだった。

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