皆に優しい幸崎さんは、今日も「じゃない方」の私に優しい

五年後

 それから五年後の、よく晴れた日。
 窓の外で木漏れ日が輝くホテルの部屋の中で、フォーマルな服を着た雪がテレビを見つめている。

「しかし、あの橘さくらが会社辞めてレポーターになるとはね」

 画面の中の情報番組では、橘さくらが話題のスイーツを食べている様子が映し出されている。彼女はあの非常階段での出来事のすぐ後、「もっとやりたいことができた」と会社を辞めていた。当時は彼女なりに、プライドを保つための言い訳だと思っていたが、こうして実際にテレビで活躍している姿を見ると、これが本当にやりたかったことだったのかもしれない。

「ま、そんなことはさておき、今日は美和の晴れの日だもんね」

 雪はテレビを消すと、私の方へ向き直った。

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