優しいkissじゃダメですか。
「どうぞ」
シワシワになった課長がゆっくりと立ち上がる。それなりに顔立ちがよく身長が高くスタイルも良いはずなのだが今は老人に見える。
今朝、私が始発で出社した時はすでにいた。昨日とスーツもネクタイもワイシャツも同じだった。昼には服装が変わっていたから、
どこかの時点で1回家へ帰ったか、もしくは近くのネットカフェへでも行ったのだろう。私が席をはずしている間に。
荒くれ者の多い(締め切り間近のみ)この業界ではめずらしく課長はいつも優しい。年齢は30からまりだろうか。
いつもニコニコと笑顔を絶やさない。丸い顔と丸い目と丸い鼻を持つ愛嬌のある顔立ちと手足の長いスタイルの良さにギャップがある。肌は透き通るように白い。
黒髪は天然パーマらしい。コンプレックスのようでいつもていねいに撫でつけているが、3時間も経たないうちに少しずつ爆発してくる。縮毛矯正は値段も時間もかかるため、いつもさっぱりと短く刈っている。太めの眉ともったりとした奥二重のまぶたとまんまるの黒い目のバランスが何とも良い味を出している。年齢の割にほっぺがふくふくでバラ色だ。(今は真っ青)性格の良さがそのまま顔に出た、と言う感じだ。
(整えればすっごいイケメンになるだろうに)
「何か飲みますか」
「いえ。あとで自分で買いにいきます。ありがとうございます」
「そうですか」
課長はいつも優しい。ふわふわの綿あめみたいなテノールの声で相手を包み、ゆっくり話してくれる。
言葉を大事にしているひとなんだな、といつも思う。尊敬する。(今はシワシワのおじいちゃんになってるけど)。
となりに座っている先輩がビクッと起きて「済みません!! まだ原稿上がってません!!」と一言叫んでまた寝た。
私はずり落ちたその先輩の肩掛けをそっとかけなおしてあげる。となりの課からまた怪物のうめきみたいな声が聞こえた。
「あなたも休憩行ってきて良いですよ。私、起きましたから」
寝ていた先輩のひとりがそう言って目を細める。助かった。夕食を調達してついでに飲み物を飲んでこよう。その夕食が夜食にならないと良いけど。最悪、明日の朝食になるけど。
「ありがとうございます。行ってきます」
「どうぞー」
まだ半分夢の中にいる先輩のまったりとした声に送られ、
私は財布やスマホ、化粧品、ハンカチなどが入ったポーチを手にオフィスを出た。
「月が綺麗ですね」と言う言葉がある。
シワシワになった課長がゆっくりと立ち上がる。それなりに顔立ちがよく身長が高くスタイルも良いはずなのだが今は老人に見える。
今朝、私が始発で出社した時はすでにいた。昨日とスーツもネクタイもワイシャツも同じだった。昼には服装が変わっていたから、
どこかの時点で1回家へ帰ったか、もしくは近くのネットカフェへでも行ったのだろう。私が席をはずしている間に。
荒くれ者の多い(締め切り間近のみ)この業界ではめずらしく課長はいつも優しい。年齢は30からまりだろうか。
いつもニコニコと笑顔を絶やさない。丸い顔と丸い目と丸い鼻を持つ愛嬌のある顔立ちと手足の長いスタイルの良さにギャップがある。肌は透き通るように白い。
黒髪は天然パーマらしい。コンプレックスのようでいつもていねいに撫でつけているが、3時間も経たないうちに少しずつ爆発してくる。縮毛矯正は値段も時間もかかるため、いつもさっぱりと短く刈っている。太めの眉ともったりとした奥二重のまぶたとまんまるの黒い目のバランスが何とも良い味を出している。年齢の割にほっぺがふくふくでバラ色だ。(今は真っ青)性格の良さがそのまま顔に出た、と言う感じだ。
(整えればすっごいイケメンになるだろうに)
「何か飲みますか」
「いえ。あとで自分で買いにいきます。ありがとうございます」
「そうですか」
課長はいつも優しい。ふわふわの綿あめみたいなテノールの声で相手を包み、ゆっくり話してくれる。
言葉を大事にしているひとなんだな、といつも思う。尊敬する。(今はシワシワのおじいちゃんになってるけど)。
となりに座っている先輩がビクッと起きて「済みません!! まだ原稿上がってません!!」と一言叫んでまた寝た。
私はずり落ちたその先輩の肩掛けをそっとかけなおしてあげる。となりの課からまた怪物のうめきみたいな声が聞こえた。
「あなたも休憩行ってきて良いですよ。私、起きましたから」
寝ていた先輩のひとりがそう言って目を細める。助かった。夕食を調達してついでに飲み物を飲んでこよう。その夕食が夜食にならないと良いけど。最悪、明日の朝食になるけど。
「ありがとうございます。行ってきます」
「どうぞー」
まだ半分夢の中にいる先輩のまったりとした声に送られ、
私は財布やスマホ、化粧品、ハンカチなどが入ったポーチを手にオフィスを出た。
「月が綺麗ですね」と言う言葉がある。