優しいkissじゃダメですか。
(世界!!)
いつか見られるだろうか。私も。海外の本屋で日本文学が平積みにされているのを。(見に行く!!)
うちの担当作家がダガー賞を獲る。ノーベル文学賞を獲る。ブッカー賞やエドガー賞を。それが夢じゃない。手の届くところにあるんだ!!
「だから、
作家の先生方といっしょに成長していきましょうね。私たちも」
「はい!!」
課長のふくふく笑顔に私も最高の笑顔で応える。ご褒美のようにまた愛おしさのこもった長いキスをされて気が遠くなった。癒され過ぎて眠い。
「仕方ありませんね。5分だけですよ」
課長の声も広い胸もあったかーい。自宅のお布団みたい。もう寝る。すこやかにねる……
「少し寝物語をしましょうか」
課長が優しい声でゆっくりと話をはじめる。何を言っているのかよくわからないがとにかく耳に心地好い。心臓に直接キスをされているみたいでドキドキするのに同時に安心する。何、この感覚。はじめて。
「バレエは私にとってとても良いものでした。が、同時に私をとても苦しめるものでもありました」
課長の語り口はあくまで優しい。癒しのエネルギーがふんわりと私を包んでいる。本屋や図書館で本に囲まれているようなしあわせを感じる。課長、ほぼ屋久島じゃないですか。癒しスポット。
「でも、私はバレエをはじめたことも、辞めたことも後悔していません。失うものと同じくらい得るものも多かった。
あなたにも出逢えた。人生最高のギフトです」
ゆっくりと髪を撫でてくれる大きな手。先ほど、夜を乗せていた手。幼子を愛おしむような、大切なものを愛でるような手で頭を撫でられて、ますます眠りの世界が近づく。
「私がバレエを辞めたことで、同じくバレエダンサーだった私の親戚が一念発起しました。
今はカナダで熱心にフィギュアスケートを学んでいます。大会にも出るとか。
あ、この話はあなたのほうがお詳しいですよね。失礼いたしました。ふふっ。
良いゆめを」
2025.08.21
蒼井深可 Mika Aoi
いつか見られるだろうか。私も。海外の本屋で日本文学が平積みにされているのを。(見に行く!!)
うちの担当作家がダガー賞を獲る。ノーベル文学賞を獲る。ブッカー賞やエドガー賞を。それが夢じゃない。手の届くところにあるんだ!!
「だから、
作家の先生方といっしょに成長していきましょうね。私たちも」
「はい!!」
課長のふくふく笑顔に私も最高の笑顔で応える。ご褒美のようにまた愛おしさのこもった長いキスをされて気が遠くなった。癒され過ぎて眠い。
「仕方ありませんね。5分だけですよ」
課長の声も広い胸もあったかーい。自宅のお布団みたい。もう寝る。すこやかにねる……
「少し寝物語をしましょうか」
課長が優しい声でゆっくりと話をはじめる。何を言っているのかよくわからないがとにかく耳に心地好い。心臓に直接キスをされているみたいでドキドキするのに同時に安心する。何、この感覚。はじめて。
「バレエは私にとってとても良いものでした。が、同時に私をとても苦しめるものでもありました」
課長の語り口はあくまで優しい。癒しのエネルギーがふんわりと私を包んでいる。本屋や図書館で本に囲まれているようなしあわせを感じる。課長、ほぼ屋久島じゃないですか。癒しスポット。
「でも、私はバレエをはじめたことも、辞めたことも後悔していません。失うものと同じくらい得るものも多かった。
あなたにも出逢えた。人生最高のギフトです」
ゆっくりと髪を撫でてくれる大きな手。先ほど、夜を乗せていた手。幼子を愛おしむような、大切なものを愛でるような手で頭を撫でられて、ますます眠りの世界が近づく。
「私がバレエを辞めたことで、同じくバレエダンサーだった私の親戚が一念発起しました。
今はカナダで熱心にフィギュアスケートを学んでいます。大会にも出るとか。
あ、この話はあなたのほうがお詳しいですよね。失礼いたしました。ふふっ。
良いゆめを」
2025.08.21
蒼井深可 Mika Aoi


