優しいkissじゃダメですか。
すがるものが目の前の課長しかいないため、課長にすがっている。抱っこ状態だ。
心臓がバクバク言っている。おかしいな。元短距離走者だから心臓は強いはずなのに。
「このまま、私の話を聞いていただけますか」
課長がやわらかい声で私にそうささやく。えっ、ま、何? 告白? まさか!!
「近年、日本のミステリの海外進出が著しいですね。ご存知の通り」
(ちがった!!)
私は全身が恥じらいで熱くなるのを感じる。よかった。口に出さなくて。
「村上春樹さんや東野圭吾さんは以前から安定した人気を海外でも誇っています。
あなたは東アジアの国へ行ったことがありますか」
「いえ」
「翻訳版も日本語版も大型書店には平積みされていますよ。圧巻です。
アジア各地で見られる現象です。現地では、当たり前のように日本の作家の作品を手に取るひとが多いんです」
「す、すごい……!!」
想像してみる。まったく意味のわからない言葉を話すひとびとが、私たちと同じ小説を読み、感動し、怒り、傷つき、癒され、笑い、涙する。
そこにはひとつの世界がある。「ファン」と言う。
(スケオタ界隈と同じだ!!)
「日本人がダガー賞を獲り、韓国人がノーベル文学賞を獲る。タイ文学や台湾文学が流行る。アジアはもはや文学作品で世界に遅れなど取っていません。
日本文学はもともと海外で高評価でした。乱歩、太宰、三島など。
再び日本作家にスポットライトが当たりはじめています。何十年も前からうちの会社の翻訳部が海外進出へ打って出ているのはご存知でしょう、
あなたも」
「えぇ」
「私たちの仕事は世界へつながっているんです」
心臓がバクバク言っている。おかしいな。元短距離走者だから心臓は強いはずなのに。
「このまま、私の話を聞いていただけますか」
課長がやわらかい声で私にそうささやく。えっ、ま、何? 告白? まさか!!
「近年、日本のミステリの海外進出が著しいですね。ご存知の通り」
(ちがった!!)
私は全身が恥じらいで熱くなるのを感じる。よかった。口に出さなくて。
「村上春樹さんや東野圭吾さんは以前から安定した人気を海外でも誇っています。
あなたは東アジアの国へ行ったことがありますか」
「いえ」
「翻訳版も日本語版も大型書店には平積みされていますよ。圧巻です。
アジア各地で見られる現象です。現地では、当たり前のように日本の作家の作品を手に取るひとが多いんです」
「す、すごい……!!」
想像してみる。まったく意味のわからない言葉を話すひとびとが、私たちと同じ小説を読み、感動し、怒り、傷つき、癒され、笑い、涙する。
そこにはひとつの世界がある。「ファン」と言う。
(スケオタ界隈と同じだ!!)
「日本人がダガー賞を獲り、韓国人がノーベル文学賞を獲る。タイ文学や台湾文学が流行る。アジアはもはや文学作品で世界に遅れなど取っていません。
日本文学はもともと海外で高評価でした。乱歩、太宰、三島など。
再び日本作家にスポットライトが当たりはじめています。何十年も前からうちの会社の翻訳部が海外進出へ打って出ているのはご存知でしょう、
あなたも」
「えぇ」
「私たちの仕事は世界へつながっているんです」