100日後、クラスの王子に告白されるらしい

9月29日、月曜日

「おっはよー」


 朝の水やりをしていたら、体操服姿の一ノ瀬が走ってきた。


「おはよ。テンション高いね」


「うん。好きな子と、文化祭デートの約束をしたから」


「……あ、そう……」


「あと71日、絶対、好きにさせる」


 それに私はなんて言えばいいの……。

 一ノ瀬はニコニコしながら、私の真正面に立つ。


「文化祭、初日の午前中が俺空いてるから、そこでいい?」


「う、うん」


「絶対に楽しませるから、期待してて」


「……そっか」


 私の曖昧な返事に、一ノ瀬は満足そうに頷いて戻って行った。

 いやいやいや。しないよ、期待なんて。

 結や友達と回った方が楽しいに決まってるじゃん。



 ……でも。

 校庭でサッカー部がミニゲームをしている。

 一ノ瀬はゴールの前でボールを受けて、走っている。

 一昨日の土曜日、「1回でいいから見てて」と言ったゲームで、一ノ瀬は一人で5点を入れていた。他の人は1点とか2点だったから、きっとすごいのだろう。


 つまりさ、んー……「期待してて」って言ったら、楽しませてくれるのかな、なんて思ったり……思わなかったり。


 そんなことを考えてたら、一ノ瀬がゴールを決めて、私に向かって大きく手を振った。
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