100日後、クラスの王子に告白されるらしい

11月19日、水曜日

 昼休み、結とお弁当を広げたら、颯くんと双葉くんが隣にきた。


「かわいいお姉さん、お弁当一緒にどう?」

「なにその下手なナンパ」


 結が笑って、双葉くんが肩をすくめた。


「一ノ瀬はあれで口下手だからな。柊の前でかっこつけてるだけで」

「言うなよ! いいだろ、好きな子の前でかっこつけないで、いつかっこつけるんだよ」

「颯くんは、かっこつけなくてもかっこいいよ……な、なんでもない!」

「莉子、あと20日だから……あんまりかわいいことしないで。俺、我慢できなくなる」

「してない!」

「なんだ、このバカップルは」


 4人でお弁当を食べて、そのあと結と双葉くんはスマホゲームの対戦をするというから、私と颯くんは図書室に向かう。


「あのさ、莉子」

「んー?」


 本を選んでいたら、颯くんの手が私を隠すように本棚についた。

 そんなに大きくない颯くんの声が、私の耳のすぐ側で聞こえて、背筋がそわそわしちゃう。


「あと20日なんだけど……莉子、俺のこと、少しは好きになってくれた?」


 囁くような小さな声は、いつもと違って不安そう。

 でも、ここで言っちゃうのは、違うと思う。


「20日経ったら、言うよ」

「……うん」


 颯くんの頭がそっと肩に乗せられた。

 ……心臓の音が、きっと彼に伝わってると思う。
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