100日後、クラスの王子に告白されるらしい

11月20日、木曜日

 体育が終わって教室に戻ったら、颯くんがもう着替えて席についていた。


「あれ、早いね。……でも他の男子は?」


「柔道で足ひねっちゃったから、先に戻ってきたんだよ」

「えっ」


 颯くんが椅子を引いて、足を見せる。

 スラックスの裾がまくられていて、足首に包帯が巻かれていた。


「大丈夫……?」

「うん。座ってる分には平気。大会、終わった後でよかったよ」


 そう言いながら弁当箱を出してくる。


「昼、一緒に食おうよ。足痛いから、あーんしてくれると助かる」

「それ、足関係ないよ」

「あはは、バレたか」


 着替え終わった結と、柔道場から戻ってきた双葉くんも合流して一緒に昼を食べる。


「一ノ瀬、柔道部のやつにぶん投げられて、受け身に失敗したんだよ」

「言うなよ」

「そいつ、三枝のことが好きだったけど、一ノ瀬がもてあそんだってぶち切れてて」

「おお……」

「三角関係だ」

「ちょ、莉子も榎本も笑うなよ!」


 颯くんは唇を尖らせるけど、自業自得だからかばえない。


「莉子、俺は莉子一筋だからな。あと19日で告白するから待ってて。その卵焼きも食わせて」

「それ、全然違う話じゃん。しょうがないなあ」

「柊、そいつ甘やかすと調子に乗るぞ」

「怪我してるときくらい優しくしろよ!」


 怒ってる颯くんの口に、卵焼きを差し出した。
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