100日後、クラスの王子に告白されるらしい

11月26日、水曜日

 放課後、図書室で勉強をしている。

 宿題は山ほどあるし、あとひと月で期末試験もある。

 二年生の二学期の期末試験の結果は、そのまま大学を決める参考になるから、いつもより真剣に受ける必要がある。


「莉子って成績どのくらい?」

「上位一割に入るかどうかくらい」

「マジか。じゃあ、結構頑張んないと同じ大学はキツイな」

「んー、でも今、学部悩んでるんだよね」


 園芸系の学部に行くか、それとも国文系にするか。


「園芸だとどこになるんだ?」

「C大」

「国立か。あーでも、C大いいな。学部たくさんあるから、俺が行ける学部もあるかも」

「颯くん、行きたい学部ってあるの?」

「あんま考えてこなかったんだよな。莉子はちゃんと考えてて偉いな」

「そうかなあ。まだちゃんと決めたわけじゃないから」


 颯くんは机に突っ伏して、顔だけこちらに向けてきた。

 困ったように笑って、私の向こうの窓の外を見ている。

 まだ部活が始まる前だから、外からは何の音も聞こえてこない。


「あと13日。でも、その先も一緒にいたいなら、ちゃんと考えなきゃなんだよなあ」

「そう思ってくれるだけで嬉しいよ」

「あんま、甘やかさないでよ」


 颯くんの頭に手を伸ばす。

 思ったより固い髪に、ゆっくり指が埋もれていった。
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