100日後、クラスの王子に告白されるらしい

11月27日、木曜日

 今日は音楽祭のリハーサルで、市民会館に来ている。最上階にあるホールを、毎年借りて使っている。


「お、莉子ちいいねえ」

「うんうん……ボロ服、妙に似合ってるね?」

「嬉しくないなあ」


 シンデレラは途中で着替えがあって、最初はボロ服で踊る。


「一ノ瀬の王子姿はちょっと待ってね」

「べ、別に楽しみにとかしてないから!」


 まずは私と継母役、それに義理の姉役で立ち位置を確認して、そのあと歌の声出しをする。

 ホールが広いから声を張らないと全然響かない!

 そういうの苦手だから、キツイ。

 妖精が出てきて、私は着替え。

 ふわっとドレスを翻して歌っていると、王子様の出番になった。

 スポットライトが、颯くんだけを照らしている。


「莉子、あと12日、僕と、踊ってくださいませんか?」

「よろこんで」


 颯くんが王子様の衣装で私の足元に跪いて手を差し出した。

 手を重ねると、ぎゅっと強く握られる。


「一ノ瀬の顔がゆるっゆるだな……」

「まあ、役的に間違ってないから」

「柊ちゃん、かわいくなったねえ」


 そんな声が聞こえてきて、少し恥ずかしかったけれど、目の前で微笑む颯くんに、仏頂面を向ける気にはなれなかった。
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