100日後、クラスの王子に告白されるらしい

11月30日、日曜日

 今日は日曜日だけど、明日が音楽祭の代休だから、その分の水やりをしに学校に来た。

 運動部はけっこう来ていて、野球部は走り込みをしているし、サッカー部はストレッチをしている。

 颯くんも捻挫が治って、今日から練習に参加すると言っていた。

 水飲み場でホースをつないでいたら、サッカー部がストレッチを終えて、颯くんと双葉くんが並んでやってきた。


「あ、莉子!!」


 颯くんが私を見つけて大きく手を振る。

 私も振り返そうとしたら……颯くんが、女の子たちに囲まれた。


「一ノ瀬先輩! 昨日かっこよかったです!」

「王子様役、お似合いでした」

「私の王子様になってほしいくらい……」


 おお、モテるのは知ってたけど、すごいな。

 嫉妬の前に感心してたら、いつの間にか双葉くんが隣に来ていた。


「大丈夫?」

「なにが?」

「や、柊さんの王子、囲まれてるから嫌じゃないのかなって」

「んー、その前に感心しちゃった」

「……本人はすげー嫌そうだけどね」

「……ほんとだ」


 颯くんは、すごく嫌そうな顔をしていた。

 眉間にシワを寄せて、口をへの字にしている。


「あのさ、俺忙しいんだけど」

「え……」

「ご、ごめんなさい……」

「どいて」

「は、はい……」


 一年生たちは怯えた顔で避けた。

 颯くんは私を見てパッと笑顔になった。

 温度差で風邪引きそう。


「莉子ー!!」

「一年生、引いてるよ?」

「俺は莉子に会いたかったんだ」

「もう休憩終わりだぞ」

「えー。莉子、あと9日。楽しみにしてて」

「9日」


 颯くんはニコニコしながら戻っていった。

 ……9日後。


 12月9日は、私の誕生日だ。
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