100日後、クラスの王子に告白されるらしい

12月03日、水曜日

 昼休み、颯くんと進路指導室で大学を調べていた。


「1組のシンデレラ役の子ってさ、あんな子いたっけ? めっちゃかわいかったよな」


 なんて廊下から聞こえてきて、颯くんが顔を上げた。


「あー、あの地味子? 3組の三枝から男取ったって」

「マジ? 大人しい顔してやるねー」


 ああ、そういう噂になってるんだ。

 端から見たらそうだよねえ……なんて思ってたら、颯くんが廊下に飛び出した。

 颯くんは背中しか見えなくて表情はわからないけど、相手の2年生の男子2人は怯えた顔をしていた。


「全然違うけど。俺と三枝は従姉弟だから付き合うとかないから。それに莉子には俺が頼み込んで付き合ってもらってるんだから、そんなガセで振られたらどうしてくれるんだよ?」

「な、なんだよ……ただの噂じゃん。マジになんなよ……」

「ふうん。じゃあ、お前に彼女できたら、似たような噂させてもらうわ」

「ちょ、おいっ」

「で、その噂はどっから流れてきたわけ?」

「知らねえよ。なんか、1年が言ってたんだよ」

「そっか。じゃあ、お前に彼女できるの楽しみにしてるわ。できるなら、だけど」


 颯くんは言い捨てて、進路指導室に戻ってくる。


「莉子」

「う、うん」

「あと6日だろ。あんなくだらない噂に振り回されんなよ」

「それは、うん。大丈夫」


 噂の発生源に心当たりあるし。

 むくれた顔の颯くんが安心できるように、微笑んで見せた。
< 94 / 96 >

この作品をシェア

pagetop