100日後、クラスの王子に告白されるらしい

12月07日、日曜日

 朝から颯くんと近所のフットサル場に来た。


「よろしくお願いします!」

「莉子相手でも、サッカーのことなら妥協しないから、覚悟しろよ」

「頑張ります! あの、まず、ルールを教えてもらえる?」

「了解。そっか、授業だと説明ないもんな」

「うん。いきなり始まるから、わけわかんないんだよね」


 そこからはサッカーの基本的なルールを教わる。

 そのあとはドリブルの練習。

 蹴りながら真っ直ぐ進めるようになったらパスの練習。


「莉子、別に下手じゃないよな」

「そ、そう? 汗止まんないし、息がもたない……」

「そりゃ、もう昼前だぜ。これだけ走り回ってたら疲れて当たり前だろ」


 言われて時計を見たらもう12時近い。


「わ、ほんとだ。気付かなかった」

「一回休んで昼にしよっか」

「うん! あのね、今日はお弁当作ってきたんだ」

「マジで!? やった、嬉しい」


 お昼を食べたら、またパスの練習と、ゴールの練習。


「ルールがわかってやると、楽しいね」

「マジで? あのさ、今度試合観に行こうよ。プロのやつ」

「うん。お兄ちゃんに言えばチケットもらえると思う」

「ん? 莉子のお兄さんって、何してる人……?」

「○○のチームで、キーパーしてる」

「ま、まさか……柊遥?」

「そうそう」


 颯くんがポカンとしている。

 まあ、あんまり言わないようにしてたからね。


「それ、俺に言っちゃって大丈夫?」

「颯くん、言いふらしたりする?」

「……しない。絶対に、しない」


 ボールを抱えて、颯くんは私の前に立った。

 汗で髪が顔に張り付いている。


「あと、2日。でも、その先も俺は莉子の信頼を裏切るようなことはしない。したくない」

「うん。それは、私もだよ」


 汗を拭いて、手をつなぐ。

 明後日は私の誕生日だ。
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