この恋、予定外すぎて困ってます





父さんのことが、 ずっと好きだった。
だから、母さんが裏切ってるなんて、 言えなかった。

言ったら、 父さんが傷つく。
それが怖かった。

学校から帰ると、家には“知らない男”がいた。
家族でもないのに、リビングで笑ってて、母さんと話してて。

その声が、耳に刺さった。
聞きたくもない声。 見たくもない光景。

だから、 家を飛び出した。
外は冷たくて、 でも家よりはマシだった。

俺の心は、 荒れていた。
毎日喧嘩して、 拳を振り回して、誰かにぶつけないと自分が壊れそうだった。
手には、新しい痣が増えていった。

父さんは気づいて、心配してくれた。
「晴人、大丈夫か?」って。
でも、母さんのせいなんて、 言えなかった。

言ったら、 父さんがもっと苦しむ。
だから、 俺は黙ってた。
黙って、 痛みを隠して、 笑ってるふりをしてた。


ある日、 父さんに母さんの不倫がバレた。

家の空気が、 一瞬で凍りついた。

母さんは泣いていた。
声を震わせて、 顔を歪めて、 涙を流していた。


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