桜吹雪が舞う夜に

「……何か、ミスがあったってことですか？」
恐る恐る問う声が、静まり返った部屋に落ちる。

日向さんはしばらく答えず、机の上に置かれたファイルを見つめていた。
やがて、かすかに首を横に振る。

「いや。そうじゃない」
短く否定してから、言葉を探すように間を置いた。

「……ただ、他にも色々やりようはあったんじゃないかって。今でも、後悔が消えないだけだ」


私は静かに息を吸い込み、握りしめた手を見つめながら、ぽつりと零した。

「……私は。理緒と、もっと一緒に居たかった」

私は震える声で唇を噛む。
ーー本当はまだ、ずっと寂しい。
その気持ちをどうしても抑えきれなかった。
……これが、彼を責める言葉になりうると、分かっていた。

日向さんは目を伏せ、深く沈黙する。
私の言葉を正面から受け止めるように。