桜吹雪が舞う夜に


勉強会が終わり、廊下を歩いていると酒井が追いかけてきた。

「御崎先生!」

「……ん?」
振り返ると、少し遠慮がちな表情でこちらを見ている。

「さっき桜ちゃんと……何を話してたんですか?」

心臓が一瞬だけ強く跳ねた。
(……やっぱり、見られていたか)

「……別に。大したことじゃない」
努めて淡々と返す。

「え、でも桜ちゃん……結構、真剣な顔してましたよ」
酒井は追及するでもなく、純粋な好奇心で首を傾げる。

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