桜吹雪が舞う夜に


「……ゲームだなんて」
思わず眉が寄っていた。自分の声が、少し強く出てしまったのを自覚する。
「一回寝たらどうでも良くなるってことですか、それって」

はっきりした問いかけに、朔弥さんは苦笑して肩をすくめた。
「……まぁ、そういうこともあるな。
でも“どうでもいい”ってのとはちょっと違う。熱が冷めるんだよ。最初の高揚感がピークでさ、そこからはただの惰性になりがちで」

その言葉があまりにも軽やかに響いて、胸の奥がずきんと痛んだ。
「……それじゃあ、相手がかわいそうじゃないですか」
自分でも驚くくらい、苛立ちが声に滲んでいた。

一瞬だけ、朔弥さんの目が真剣になる。
「そう思うなら、俺みたいなやつに惚れなきゃいいんだ」
そう言ってまた軽口に戻り、笑ってグラスを煽った。


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