桜吹雪が舞う夜に
「……結局、あんたって独占欲と支配欲の塊じゃない」
氷を転がすように冷たい声。
「醜い感情ばっかり持ってるくせに、自分の愛情は綺麗だって思い込んでるの。……笑っちゃう」
拳が膝の上で震えた。
声を絞り出そうとしても、喉が詰まって言葉にならない。
水瀬は軽い調子に戻り、長い髪をいじる仕草をした。
「まぁ、そういうところが“御崎日向”らしいんだけどね」
言葉の刃は止まらない。
「桜ちゃんみたいな子供からしたら、大人だってだけで格好よく見えてるだけよね。
いいわね、年下って。勝手に幻想持ってくれて」
軽やかな口調なのに、突き刺すように冷たい。
「……でもさ、その幻想が剥がれたとき、残るのは何?
ただの、独占欲に塗れた男でしょ」
喉がかすかに動いた。
言い返したい。否定したい。
――だが、言葉は一つも出てこなかった。