桜吹雪が舞う夜に
「……あなたの考えてること、知ってるよ」
俺は眉をひそめる。
「……何だと」
水瀬は肩を竦め、さらりと続けた。
「桜ちゃんには、放射線、病理、皮膚科、眼科……そういうバランスの取れた部署で働いてほしいんでしょ?
自分を削ってまで、危険な現場には立ってほしくない」
図星。
口を開きかけたが、否定の言葉が一つも浮かばなかった。
水瀬はさらに笑みを深める。
「普通に女としての幸せも手に入れてほしいんでしょ。
あぁ、あわよくば自分の子供もいつか産んで欲しい――なんて思ってたりするのかな」
冗談めいた調子なのに、胸を鋭く突き刺す。
息が詰まり、反論すればするほど図星を肯定してしまう気がして喉が焼ける。
「……お前、なんなんだよ。一体何がしたいんだ」
低い声。怒鳴り声ではなく、押し殺した苛立ちと動揺が滲んだ。
水瀬は目を細め、愉快そうに笑う。
「さぁ? 何がしたいと思う?」
その軽さが逆に、心を深くかき乱す。