桜吹雪が舞う夜に

矛盾 Sakura Side.




いつからそう思うようになったのか。
……日向さんの優しさに包まれると、息が詰まりそうになる。

本当に、優しい人だ。
私の嫌がることは絶対にしないし、危ない場所には行かせない。
夜遅くなれば必ず送ってくれて、食事のときは財布すら出させてくれない。
酔い潰れても、怒るでもなくただ側で支えてくれた。

そのすべてが、私を守ろうとしてくれている証だって分かってる。
分かってるのに。

まるで真綿で首を絞められているみたいに、柔らかく、逃げられない。
安心で満たされているのに、呼吸が苦しくて。
抗おうとすれば、その優しさごと失ってしまいそうで、怖くて何も言えなくなる。

――こんなに守られて、幸せなはずなのに。
どうして私は、こんなにも泣きたくなるんだろう。


付き合い始めた頃は、その全てが新鮮で、疑いようもないくらいの幸せだと思っていたのに。


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