桜吹雪が舞う夜に
本当は、こんなことになるくらいなら飲み会なんて行ってほしくない、と彼は言った。
その声には、怒りよりも恐怖に似た色が混じっていて、私の胸を締めつけた。
酒井先輩とも、本当はあまり喋ったりしてほしくない、とも。
その言葉の裏にあるのは、きっと嫉妬なんかじゃない。
ただ私を守りたい一心で、他の誰の目にも触れさせたくないっていう、彼のどうしようもない気持ち。
……でも、信じるって言ったから、それは出来ないんだ、とも。
苦しそうな声でそう告げられた瞬間、私の胸に重たい痛みが広がった。
信じたい。信じてほしい。
でも、その「信じる」という言葉は、彼にとって拷問みたいに辛いことなんじゃないかと思ってしまう。
私の自由と、彼の安らぎ。
両方を一度に叶えることなんて、本当にできるんだろうか。