桜吹雪が舞う夜に
並んで歩き出すと、街路樹に巻きつけられたイルミネーションが視界に広がった。
雪を反射して、白や金色の光がきらめいている。
吐く息さえ、どこか特別な夜の演出のように見えた。
「……綺麗ですね」
思わず口にすると、日向さんはちらりと横を見て、小さく笑った。
「毎年やってるらしいな。……けど、こうして歩くのは初めてだ」
その言葉に胸が熱くなる。
ただ光を眺めて歩くだけなのに、隣に彼がいるだけで、何もかも特別に思えた。
時折、日向さんの肩に積もった雪が落ちる。
無意識に手を伸ばして払うと、彼は一瞬驚いた顔をして、それから照れたように視線を逸らした。
イルミネーションの光が彼の横顔を照らし出す。
疲れの影を隠しきれないその表情に、私はそっと問いかけるような気持ちで見入ってしまった。
(……どうか、この人の心が少しでも軽くなりますように)
雪と光の中で歩く二人の影は、静かに寄り添っていた。