桜吹雪が舞う夜に
初めての遠出 Hinata Side.
桜がバイトを始めてから、しばらく経った頃だった。
週末、少し遠出しないか。
車を運転する自分の姿を想像しながら、ふと口をついた。
「俺、車出すよ。再来週になると、もう多分大学、試験期間だろ。……しばらく会えなくなるなって思ってさ」
「……嬉しいです! どの辺ですか?」
桜がぱっと顔を輝かせる。その反応に、胸の奥がほんのり熱くなる。
「どこでも。ディズニーランドとかもありかなって思うし、鎌倉とかでもいいよ」
一瞬、少し気恥ずかしい。自分がこんな提案をするなんて、以前の自分からは考えられなかった。
「一日一緒に過ごせたらいい」
その言葉に、桜は照れくさそうに小さく笑った。
ーーまだ、触れるだけで精一杯なのに。それでも、彼女と過ごす時間をもっと欲しいと思ってしまう自分がいた。