桜吹雪が舞う夜に
(……俺は、いつまで耐えられるんだろう)
日に日に欲望が増えていく。彼女の笑顔を見るたび、手を伸ばしたい衝動に駆られる。
けれど、踏み出せば彼女の未来を奪うんじゃないかという恐怖が、いつも足を縛る。
桜はまだ十九歳。
サークルで笑って、友達と遊んで、大学生活を楽しんでいる。
俺と違って、まだ「今」を生きるべき年齢だ。
(大人の俺が欲望を押しつけたら、それはもう“恋人”じゃなく“重荷”になるんじゃないか)
分かっている。
けれど、彼女が笑いながら名前を呼んでくれるたびに、胸の奥が締めつけられる。
「……桜」
小さく呟いた声は、誰にも届かない。
ただカウンターに落ち、消えていく。
そして心の奥で、ひとつだけ残酷な問いが響き続けていた。
(それでも――俺は、どこまで理性で縛れるんだ?)