桜吹雪が舞う夜に
夜更け。
日向さんはベッドの縁に座り、隣に並ぶ私の肩をそっと抱いた。
「……桜」
私を呼ぶ声は、驚くほど低く掠れていた。
その瞳が近づいた瞬間、何も考える暇もなく、唇を重ねていた。
最初は浅く。だが、気づけば深く求めるように舌を絡めていた。
「……っ」
無意識のうちに身体が小さく震え、シーツを握る指先に力がこもる。
彼が、それを見て迷う気持ちを抱えてしまったのが、瞳を見てすぐに分かった。
「……ごめん」
息を切らし、額を私の肩に押しつける。
「強引になりかけた。……嫌な思い、させたくない」
違う。……嫌じゃない。
朔弥さんに言ってもらえたように、私にはちゃんと彼に、伝えなきゃならないことがある。