桜吹雪が舞う夜に
理性の綱を握り続けていた指が、力尽きてほどけていく。
胸の奥に潜んでいた渇望があふれ出し、もう止められない。
「……桜」
低く名前を呼ぶと同時に、唇を深く塞いだ。舌をねじ込むように貪り、逃げ場を奪う。 呼吸を奪われながらも、彼女は必死に応えようと口を開き、震える声を洩らす。
「……っ、ひな……た、さ、」
か細い声、その響きさえも熱に溺れた心には、抗いがたい誘いにしか聞こえなかった。
抱き寄せる腕にさらに力がこもる。
痛みに身を竦める小さな身体を感じながらも、どうしても手放せない。
欲しくて、ただ欲しくて。
彼女の存在そのものを、この身に刻みつけずにはいられなかった。
「……桜……」
縋りつくように名を呼び、乱れた呼吸を重ねながら、彼女の小さな身体を抱きしめ続けた。
理性はどこにもなく、ただ本能と欲望の中で、彼女に支配されるように溺れていた。