4人の兄に溺愛されすぎて困ってます!?

襲撃

「え?人間界でって…私にとってはこの世界が私の地元で、人間界は行ったことも見たこともないんだよ?怖いよ、信じられないよ」



「…だよね!コマリはここが一番好きなんだよね?!」



「そうだよ、何言ってるの?」



そう、私が言った時ナツキお兄ちゃんが私を抱き寄せる。



「絶対、何があっても俺たちはコマリを手放さない。何があっても必ず助けに行くから」



「…?」



お兄ちゃん達は私を取り囲むように円になると、私を抱きしめていた。



真実を知った日から、私はお兄ちゃんとの接し方が分からずに居た。



「おはよう、コマリ♡」



なのにハルキお兄ちゃん達はいつも通りの態度だった。



「ねえ、お兄ちゃん…私が人間だっていつから知ってたの?」




「コマリが高校に入学するちょっと前だね」



「そんなに早く知ってたの?!」



「母さんが気を使ってくれたんだよ、『ちゃんと後悔はしないように』ってね」



「何を後悔するの?」



「…それはね…ふたりだけの秘密にして欲しいんだけど、コマリは今"人間界で人間として暮らさないか?"と誘われていてね…それを僕たちが断り続けて居るんだ」



「…私、そんなことになってるの?」



ハルキお兄ちゃんが頷く。



「…だから昨日…みんなあんな態度だったんだ」



「ごめんね、怖い思いをさせたくなくて今まで黙ってた。でも、もう時間が無い…実は、向こうの世界から早く返事をするように催促されていて、コマリの意思を確認するにはあんな方法しかなかったんだ」



「…そう、だったんだ…」



「そんなこと急に言われても実感ないよね?僕も実感はないんだ…コマリと血が繋がってないなんて」



「…私も…実感なんかないに決まってる。生まれた時からずっとお兄ちゃん達のそばにいたのに…それがもうすぐ終わるかもしれないなんて…!」



「絶対終わらせたりなんかしねー!何がなんでもコマリを守ってみせるって昨日改めて誓ったろ?…だから、そう心配すんな」


何処で盗み聞きをしていたのだろうかフユトお兄ちゃんまで私を慰めてくれる。


「そうだね!ありがとう、ハルキお兄ちゃん!フユトお兄ちゃん!」




そうこうしている内に学校に着き、お兄ちゃん達と別れる。



こうして、私の日常が今日も始まる。



だが、この日はいつも通りとはいかなかった。



「おい、コマリ!お前、今日の課題の提出がまだだぞ?」


「すみません、今日中には提出します」


「それは当然のことだ。…ったく、ただでさえお前は実習の成績も悪いのに…」


先生の長ったらしいお説教を聞き流し、私はお昼休みにお兄ちゃん達に補習に引っかかった旨のメールを送った。


『そっか、分かったよ。校門で待ってるから、終わったら絶対に連絡してね』


すぐさまお兄ちゃん達を代表してハルキお兄ちゃんからの返事が来ていた。


そして、課題を忘れた私は、放課後に補習を受けることになった。



1時間後、無事に課題を提出すると、お兄ちゃん達に連絡を入れる。


だが、いつもはすぐに返って来る返信がこの日は返って来なかった。


私は、途端にお兄ちゃん達のことが心配になり、慌てて校舎から出る。


だが、そこにはお兄ちゃん達がボロボロの姿で倒れて居た。


私はお兄ちゃん達のそばに行こうとする、が。


「…お迎えにあがりました。瑚莉様」


背後から声がする。


振り返るとそこには、大半の女性はイケメンだと答えてしまいそうな美少年が居た。


「…!貴方は…?」


「名乗りたい所ですが、今は少しだけ眠って居て下さい」


美少年がそう言うと、私に近づいて来た。


私は距離を取り、お母さんから貰った指輪の魔法でお兄ちゃん達を守る。



「おっと…まぁ、今回は挨拶だけのつもりなので、そんなに警戒しないで欲しいのですが…仕方ありませんね歩夢、帰りますよ」



そう言い残し、突然消える2人組の男



私はお母さんに連絡を入れてから、お兄ちゃん達に魔法をかけて宙に浮かせて帰宅した。


数日後、フユトお兄ちゃん以外は目覚めてそれぞれ体力回復に務めていた。


「フユトお兄ちゃん…」


そばで寝るフユトお兄ちゃんの手を取り、問いかける。



すると


「フユトお兄ちゃん!」


フユトお兄ちゃんは目を開けてしっかりと私を見て微笑んだのだった。


フユトお兄ちゃんが目覚めてから数日、無事にみんな元気に回復し、いつも通りの平穏な日々が戻っていた。


だが、そんな平穏も長くは続かなかった。


薄暗い雲が広がる庭にこの前の2人の男が現れる。


「やぁやぁ、お久しぶりですね。皆様」


「コマリ!大丈夫かい?コマリ!」


ハルキお兄ちゃんが私を後ろへと追いやり、守ろうとするも


首筋に痛みが走り私は意識を失くした。


「…ここは?」


目が覚めると私は、まだあどけなさが残る14歳ぐらいの出で立ちの美少年の膝の上で寝ていた。


「おや、お目覚めになられましたか?」


「ここは人間界。貴女のお父様である康二様のご命令で我々はお迎えにあがりました」


長身の紫色の長髪をたなびかせたイケメンがお辞儀をし、美少年は私を膝に寝かせたまま微笑みを浮かべていた。
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